詳説日本史研究(山川出版社 2000年版) より書き起こし
↑高校教師用の教科書です。
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361頁本文
【欧米列強の植民地獲得合戦】
19世紀末、日本がようやく近代国家を形成したころ、欧米先進資本主義諸国は早くも帝国主義段階に突入しようとしていた。
諸列強は生産物の販路を海外に広げ、また、直接に資本を輸出して利益を収めるためにこぞって積極的な対外進出政策をとり、植民地獲得を競い合ったが、その矛先は、アジア・アフリカなどの発展途上諸地域に向けられた。
368頁本文
日露戦争後)日本は東アジアの強国となり、急速に勢力を拡大し、欧米列強諸国に伍して国際政局で大きな影響力をもつようになった。国際社会において欧米列強と肩を並べる強国を建設するという明治維新以来の日本の目標はひとまず達成されたといえよう。
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さて、日本は日露戦争に勝利した後、帝国主義段階になっていったのでしょうか?次の記事で書きますが、朝鮮(大韓帝国)は1910(明治43)年に日本に併合されます。現在の韓国では、併合されていた1910~45の期間を『日帝36年』と呼称して、屈辱の期間だと論調されています。
検索するとこんなキーワードが・・・((((;´・ω・`)))
『恨』って???
台湾は日清戦争後に日本統治領となってますから日本の統治は50年にもおよびます。しかしこのような論調はありません。現在の台湾では『日本統治時代』と呼ばれているようです。
そりゃ『大日本帝国』と国号をなのっていたのですから、帝国主義といえば帝国主義なのでしょう。しかしそれは、欧米列強の帝国主義と同様なものだったのでしょうか?
教科書引用部分から摘出『諸列強は生産物の販路を海外に広げ、また、直接に資本を輸出して利益を収めるためにこぞって積極的な対外進出政策をとり、植民地獲得を競い合った』日本もこれと同じことをやったと?・・・。
そもそも帝国主義って教科書の記載でどう定義づけられているのでしょうか?
世界史の教科書に記載されている箇所を引用して調べていきましょう。
詳説世界史研究(山川出版社 2002年版) より書き起こし
↑高校教師用の教科書です。
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408~409頁本文
【帝国主義】
帝国主義という言葉は、ローマ帝国時代からあり、国家の領土的拡大や植民地支配をさしていた。19世紀末に問題となったのは、イギリス保守党の拡張主義に対し、小英国主義①を掲げる自由党側がそれを「帝国主義」として非難したことに始まる。
408頁欄外
①19世紀半ばのイギリスの植民地拡張に反対する理論。植民地支配はかえって負担を増加させるとして植民地無用論を唱えた。主として自由党の主張に多い。
(中略)
帝国主義の)背景には資本主義列強の国内産業構造の変化があった。19世紀末には銀行・証券会社の巨大化によって、過剰資本が蓄積され、海外にも有利な投資先が求められていた。
(中略)技術革新による第2次産業革命は新しい天然資源を必要とした。
その代表は石油とゴムであるが、錫・銅・亜鉛・ニッケル・硝石などの工業用に必要な金属はヨーロッパにはほとんど産出されず、すべてアフリカ・アジアの未開発地域に求めなければならなかった。そこで有利な資本投下を海外に求めていた資本主義が、現地の安価な労働力を利用して、新しい企業(ゴム園・鉄道・油田など)を低開発地域で経営する傾向が生まれたのである。
その際、未開発地域がしばしば政治不安や国内混乱に陥っているため、経済が政治と結び付き、いろいろな名目で(租界・租借地の設定)国家が内政干渉を試み、その地域を勢力範囲または保護国化していった。
さらに、イギリスに続いてドイツ・フランス・アメリカ・ベルギーなども過剰資本投下地域の奪い合いから、国家単位の侵略的行動を進めるにいたった。
軍事支配・植民地の確保=分割といった現象が19世紀末から20世紀にかけて華々しくおこわれたのはこのためである。
このような国家の膨張政策を帝国主義と呼び、この政策が列強によって無制限におこなわれた1875年~1914年ころを、世界史上帝国主義時代と呼んでいる。
409頁・囲み記事
【白人の負担(白人の責務)】
イギリスの小説家キップリング(Kipling 1865~1936)は、後進民族にすぐれたヨーロッパ文明をもたらすのは白人の使命であるという「白人の負担(白人の責務)」という考え方を主張し、ヨーロッパ人の間に広がった。
これがダーウィンの進化論と結びつき、強者と弱者の別は、人間の優劣だとする社会ダーウィン主義となり、すぐれた民族が劣った民族を支配するのは自然の法則にかなうものだとされ、帝国主義を正当化した。
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この当時の日本では独占資本がまだ形成されていません。
日本の資本主義は日清・日露の戦争と同時進行で発達し、日本の財閥が多角経営でコンツェルン形態になり独占資本が形成されたのは1909(明治42)年です。
過剰どころか日本国内にまだ形成されていないものをどうやって海外に投資するのですか?
ゆえに、『過剰資本が蓄積され』『有利な資本投下を海外に求めていた資本主義』『経済が政治と結び付き、いろいろな名目で(租界・租借地の設定)国家が内政干渉を試み』という部分は日本型帝国主義には当てはまらないといえるでしょう。
むしろ『政治主導で資本主義経済を指導・育成した』のです。日本国の防衛線構築のために侵略者である欧米列強のやり方=「独占資本主義と帝国主義政策」を模倣したのです。
いわゆる富国強兵ですね。
日本列島の周囲が欧米列強国に植民地化されそうならば、その前に日本がその地域を勢力範囲または保護国化した。
「やられる前にこっちからやる」
「やられそうなら先にやる」
そういう弱肉強食の時代でした。
日本の意思としては、台湾・朝鮮・満州に日本とともに欧米列強と戦ってほしかったのです。
だから、台湾・朝鮮・満州に積極的に投資をし、京城と台北には帝国大学までつくって、日本国内同様に富国強兵化を図ったのでした。資本が国内に過剰だったから投資したのではありません。むしろ国内は苦しかったのですよ。
京城と台北の帝国大学は、大阪・名古屋よりも先に創られています。国立の最高学府を内地の大阪・名古屋よりも先につくったんです。
ただ、残念ながら、日本人のなかに『日本人の負担(日本人の責務)』みたいな考え方を持ってしまった人も少なからず居たのではないかと思います。満州国に関しては、欧米の植民地政策に
近くなってしまいました。そして、日本のやり方は真っ正直すぎました。
そんな中、日本にとって新たなる脅威の敵国が東アジアに進出してきます。
詳説世界史研究(山川出版社 2002年版) より書き起こし
↑高校教師用の教科書です。
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423頁本文
極東での積極的進出を断念したロシアと、中国東北部(筆者注:満州のこと)の利権を南北に分かち、それぞれの勢力圏(ロシアは北部・日本は南部)として了承することで、急速に接近していった。
すなわち1907年、日露協約が結ばれ、それぞれの勢力圏を相互に尊重することで両国は提携した。
これと並行してロシアの同盟国フランスとの間にも日仏協約が結ばれ、日本の韓国における優越的地位と、フランスのインドシナにおける優越的地位を相互に承認した②。
一方アメリカは、1905年、桂=タフト協定により、日本の韓国に対する優位的地位とアメリカのフィリピンに対する優位的地位を相互承認した。
しかし、中国東北地方(満州だお)については門戸開放の原則を主張し、米資本の参入の機会をうかがっていたから③、日・露による東北地方(満州って言うとるやろが!)の利権分割は極めて不快なものであり、また極東における日本と英・仏・露の提携の成立は、アメリカに孤立感を抱かせることになった。
このためアメリカの日本に対する好意は冷却し、両国の関係は次第に険悪な方向にむかっていった。アメリカでの日本人移民排斥運動④が始まったことなどは、その顕著な表れである。
423頁欄外
②このため、ベトナムのファン=ボイ=チャウの東遊運動(日本への留学運動)は、フランス政府の要請を受けた日本政府の弾圧によって、挫折に追い込まれた。
(筆者注:クリックしてみてください。弾圧という言葉は不適当です。)
③たとえば、アメリカの鉄道王ハリマンは南満州鉄道の経営への参加に強い意欲を持ち、一時日本政府との間に南満州鉄道を日米合弁事業とする予備協定を成立させていた。
④1906年、カリフォルニア州での日本人児童の通学拒否事件に始まり、さらに州議会による移民制限法・日本人土地所有禁止令の可決へと排斥運動はしだいに激化し、全米に広がっていった。最終的には1924年の移民法により、日本人移民は完全に停止された。
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アメリカってなんなん?(--〆) ~~次回へ続く~~
今回の記事の画像の引用元
1枚目/キャプチャ画像
6枚目/http://homepage3.nifty.com/asia-kenbunroku/Shokuminchi.htm
そのほかは自前の教科書より引用しました。
もっと詳しく知りたい方は、ウイキペディアでお勉強できます。
wikipedia.org/wiki/帝国主義
wikipedia.org/wiki/植民地
(☝GIFの画像にて欧米列強の植民地拡大の様子が一目で分かります。必見!)
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